
観光客の増加を目指し、SNSを活用して地域の観光資源をPRする自治体が年々増加しています。しかし、継続的に情報発信を行っていても、認知の向上や来訪の増加につながっている実感が持てないと感じている方も多いのではないでしょうか。また、発信を続ける中で、コンテンツのマンネリ化に課題を感じているケースも少なくありません。
そこで注目したいのが、インフルエンサーの起用です。SNSで多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーに発信してもらうことで、普段はなかなか届けることができない層にも情報を届けることが可能になります。また、発信内容についても、インフルエンサーの世界観を通して発信されることで、新鮮な印象を与えることができます。
本記事では、自治体にとってのインフルエンサーの活用メリットやよくある課題のほか、実際の活用事例をご紹介します。ぜひ施策検討の参考にしてみてください。
自治体におけるインフルエンサー活用のメリット
一般財団法人地方自治研究機構が、2024年3月に発表した「自治体広報戦略のあり方に関する調査研究」によると、都道府県および市区町村における広報目的のSNS活用率は、YouTube・Facebook・X(Twitter)・LINE・Instagramのいずれも半数を超えており、SNSの積極的な活用が進んでいることが読み取れます。中でもYouTubeは利用率が9割を超えています。

※出典:一般財団法人地方自治研究機構「自治体広報戦略のあり方に関する調査研究」(2024年3月)より引用
一方で、同報告書では、これからの地方自治体には戦略的広報が必要とした上で、「発信情報のマンネリ化」「拡散力不足」「SNSの登録者数が増えない(減っている)」といった課題を現場の生の声として挙げています。
これによって、自治体の公式アカウントによる発信だけでは、すでに興味を持ってアカウントをフォローしている“既存ファン”以外に情報を届けることが難しい現状があることがうかがえます。
こうした課題に対して有効なのが、インフルエンサーの活用です。
インフルエンサーは、多くのファンと拡散力を持っています。インフルエンサーに自身のチャンネルやアカウントで自治体の魅力を発信してもらうことで、これまでリーチできていなかった層への認知拡大が期待できます。また、第三者の視点を通じて情報が発信されることで、自治体自らが発信する情報とは異なる形での共感や信頼の醸成にもつながります。
また、インフルエンサーが観光のモデルコースを回り、その様子を紹介することで、旅行のイメージがしやすくなり、実際の旅行計画につなげてもらいやすくなります。この記事では、インフルエンサーによるモデルコース訴求の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
インフルエンサー施策でよくある3つの課題
インフルエンサー施策を成功させるためには、単にファンの多いインフルエンサーを起用すればいいというわけではありません。施策の効果を最大化するため、そして思わぬトラブルに見舞われないためにも、インフルエンサー施策で自治体が直面しがちな課題を確認しておきましょう。
①インフルエンサーの選定:ターゲットの不一致
起用するインフルエンサーを選ぶ際、単にチャンネル登録者数やフォロワー数だけを参考にしてしまうと、そのインフルエンサーの世界観や方向性、ファンのニーズと合致せず、思うように効果が出ないといったことに直面してしまいます。これは、本来情報を届けるべきターゲットと、実際に狙ったターゲットが一致していないことが原因です。
もちろんファンの数も一つの大事な要素となりますが、インフルエンサーを選定する際には、ほかにもPRしたい内容とインフルエンサーの世界観や方向性が合っているか、インフルエンサーのファンがその内容に興味を持ちそうか、インフルエンサーとファンの間に信頼関係が築かれているか、といったことも注目しましょう。
インフルエンサーの選び方については、以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
参考記事:購買につながる!効果的なインフルエンサーの選び方や注意点、企業事例とは
②施策の効果測定:不明瞭なKPI
インフルエンサー施策を実施する場合は、必ず目標とする数値指標(KPI)を明確にします。
KPIには、施策を実施する目的(KGI)に沿って、その目的の達成度合いを評価できる指標を設定します。施策を実施したらKPIに設定した指標の数値がどのように変化したかを測定し、施策を通してどのような効果を生むことができたかを検証して、次の施策に活かしましょう。
KPIが明確になっていないと、その施策にどれほどの効果があったのかがわからないのはもちろん、何を意識してインフルエンサーを選定するのか、どのようなコンテンツを発信してもらうのかも不明瞭になってしまい、思ったような成果が上げられないということに陥ってしまいます。
たとえば、インフルエンサーが動画で発信を行った場合、最もわかりやすいKPIは「再生数」です。施策の実施目的として、認知向上や興味喚起、現地への訪問などの何を設定したとしても、まずは動画を見てもらわなければ始まらないため、「再生数」は欠かせない指標でしょう。しかし、KPIはそれだけでなく、目的が興味喚起であれば「コメント数」や「いいね数」、「SNSでの言及数」など、いろいろな視点で評価しましょう。
KGIやKPIの設定については、以下の記事でも詳しく解説しています。
参考記事:SNS運用の成果を測るには?見るべき指標と分析方法を徹底解説
③リスク管理:ステマや炎上への不安
インフルエンサーを起用したときの主なリスクといえば、ステルスマーケティングや炎上が挙げられます。
ステルスマーケティングとは、広告であることを明示せずに商品やサービスの広告を行うこと。ステルスマーケティングは、「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある」として景品表示法で規制されています。インフルエンサーを通じて発信を行ってもらう場合、広告に含まれるケースと、広告には含まれないケースがありますので、しっかりと確認して対処する必要があります。
ステルスマーケティングについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、事前に確認しておきましょう。
参考記事:ステルスマーケティング(ステマ)規制とは?インフルエンサー案件は要注意!
また、コンテンツを閲覧したユーザーから批判が殺到し、不本意なかたちで拡散してしまう「炎上」にも注意する必要があります。炎上は、モラルに反することや差別的なことなど常識的な配慮があればある程度避けられることだけでなく、思わぬところで批判を浴びてしまうといったこともあります。知らなかったでは済まされないため、SNSで特に注意すべきことや過去の炎上事例も含めて、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
炎上については、以下の記事でも詳しく解説しています。
参考記事:【SNSリスク分析レポート】最新のSNS炎上を媒体別・性別・業界別・カテゴリ別に解説
株式会社コムニコでは、上記3つの課題への対応も含めて、インフルエンサー施策を一気通貫で支援しています。コムニコには豊富なSNS運用の支援実績がありますので、インフルエンサー活用やSNS運用について相談したいという場合や少しでも不安があるという場合、施策を実施したいけれどノウハウやリソースが足りていないという場合など、お気軽にご相談ください。
【全国の自治体事例4選】モデルコース訴求からアンバサダー制度まで
栃木県×Vlog: 1泊2日の「再現性の高い」モデルコース提案
栃木県は、旅好きのファンを多く持つインフルエンサーを通じて、1泊2日で現実的に回れる観光のモデルコースをYouTubeで紹介しました。複数のインフルエンサーを起用し、それぞれの視点と世界観で観光地を周知しています。
■くぼたび|旅に生きるアラサー夫婦
起用したのは、夫婦で旅をし、その地域の魅力を発信しているインフルエンサー。主にグルメや温泉ホテルに焦点を当てた旅で、日頃の疲れを癒せるモデルコースを紹介しています。夫婦で楽しそうな様子が、旅の魅力にもつながっています。また、概要欄でも各施設のHPやマップが丁寧に紹介されており、視聴者がすぐに旅行計画を立てられるようになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=piBQhNgzWsE

■Maibaru Travel
こちらは、美しい映像と洗練された世界観で旅の魅力を発信するインフルエンサー。紅葉の時期に日光を訪れ、日光東照宮などの観光名所や栃木の自然の魅力を紹介しています。このインフルエンサー特有の洗練された世界観を通して紅葉を発信することで、視聴者の心を掴んでいます。
https://www.youtube.com/watch?v=U1ug4tCXQ5I

浜松市×タイパ旅: Z世代に向けた、半日で主要スポットを巡る「弾丸女子旅」
浜松市は、旅行やグルメを軸に発信を行っている女性インフルエンサーを複数起用し、半日で浜松を満喫できるタイパ(タイムパフォーマンス)抜群の女子旅を紹介しています。タイパを求めがちなZ世代やミレニアル世代を主にターゲットにした施策です。
■kie
グルメや美容を中心に発信しているインフルエンサー。Instagramのリールで、浜松市のグルメや観光地をテンポよく紹介しています。撮影日は雨天だったようですが、雨でも楽しめることが伝わってきます。
https://www.instagram.com/reels/DLpNc9vB3_s/

■トンちゃん✈︎ グルメ女子旅✈️旅行・グルメ・海外旅行
こちらもInstagramのリールで、浜松のグルメや浜松でできる体験を紹介しています。グルメはうなぎに焦点が当てられており、うなぎ好きならそのまま真似して回りたい内容になっています。また、浜松の伝統工芸を楽しめる体験もおもしろおかしく紹介されており、浜松を知って興味を持つ入口にもなっていることがうかがえます。
https://www.instagram.com/p/DLzKSmdSXkK/

福島県×フォトグラファー: インバウンドに向け、海外視点での「ホープツーリズム」を発信
福島では、海外のインフルエンサーを起用し、海外に向けた発信を行っています。
■Tim Northey
オーストラリア シドニー出身のフォトグラファーかつ、Instagramで世界の写真を投稿しているインフルエンサーを起用し、海外の人々に向けて震災後の福島県の様子を紹介しています。風景や地域の人の写真を通して、福島の空気感や未来への祈りが伝わり、実際にそれを現地で味わいたいと思わせる内容になっています。
https://www.instagram.com/p/DUxgx03D010/

埼玉県×地元出身インフルエンサーのアンバサダー制度:最適な人選の重要性
埼玉県は、埼玉の地元に密着した情報を発信しているインフルエンサーを起用することで、すでに埼玉のグルメや旅に興味を持っている人の行動を喚起しています。
■埼玉グルメ
Instagramのリールで埼玉県のグルメを紹介するインフルエンサー。1店舗ずつ紹介している他の投稿と同様に、いちご狩りができる一つの施設に焦点を当てています。地元の人も含めて、埼玉県内のグルメに興味を持つ人が見ていると考えられるため、季節が限定される内容でもすぐに行動喚起につながるでしょう。
https://www.instagram.com/p/DVLIPF8k4GX/

同じいちご狩り施設でも、複数のインフルエンサーを起用して紹介してもらうことで、興味の視点や年齢などが異なる層にも幅広く届けられています。いずれも埼玉のグルメや旅を発信しているアカウントで、興味だけでなく即日の行動喚起を意識していることがポイントです。
にっこり埼玉 【埼玉グルメ】:https://www.instagram.com/p/DVRBgOEgb_c/
にーしゃ✎𓂃ほのぼの埼玉旅𓂃:https://www.instagram.com/p/DVIaHp1EibH/
【コムニコ支援事例2選】:漫画家活用からインバウンド誘致まで
コムニコでは、インフルエンサー施策の実施支援を行っています。この章では、コムニコが実際に支援を行った事例を2つご紹介します。
高知県:漫画の主人公を起用した「高知グルメPR」の独自性
コムニコでは、高知県が著名な漫画家を多く輩出していることに着目。テレビドラマ化もされている『忘却のサチコ』や『いつかティファニーで朝食を』 といった人気グルメマンガの主人公をインフルエンサーとして起用し、高知県のグルメの紹介を行いました。マンガ形式でそのおいしさや魅力を紹介することで、作品のファンを含めた多くの人に読みやすく、かつ親しみやすく届けています。
また、同時にプレゼントキャンペーンも実施し、さらに幅広い層に届けられる構造に。Instagramアカウントのフォロワー数は、2019年7月から2022年12月の3年余りで約800から約33,000にまで伸ばしています。
こちらの事例は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
参考記事:コムニコ、高知グルメの訴求を目的とし“漫画の主人公”をインフルエンサーに起用するInstagramキャンペーンを企画
新潟県:インバウンド誘致のためのファムトリップ施策
ファムトリップ施策とは、観光誘致などを目的に、海外の旅行業者やインフルエンサー、メディアなどを招いて現地を視察してもらい、記事や動画、SNS投稿といったかたちでその魅力を発信してもらうプロモーション施策のこと。新潟県のファムトリップ施策では、タイで活躍するインフルエンサーのsanha.patiawさんを観光名所に招き、Instagram、TikTok、FacebookといったSNSで新潟の魅力を発信してもらいました。
発信してもらったのは、新潟の桜の名所。訪日観光客に桜の鑑賞が高い人気を誇っていることから、翌年以降の桜シーズンに新潟に訪れてもらうことを目指しました。
こちらの事例は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
参考記事:【ファムトリップ事例:DTK AD】新潟インバウンド推進協議会様にご依頼いただき、インバウンド誘致のためのファムトリップ施策を実施しました

まとめ:失敗しないインフルエンサー活用のポイント
インフルエンサーの活用は、より多くの人に自治体の情報や魅力を届け、認知や興味、行動の喚起につなげる手段として非常に有効です。
インフルエンサー施策を実施するときは、まずインフルエンサーを起用する目的(KGI)や、施策を通して目指す数値目標(KPI)を設定し、目的に沿ったインフルエンサーを選定することが大切です。また、施策実施後はKPIに沿って効果測定を行って成果を可視化し、次の施策につなげましょう。
公共機関として、ステルスマーケティングへの配慮といったリスク管理も欠かせません。インフルエンサーに発信してもらうコンテンツにはPRであることを明記してもらうなど、注意を怠らないようにしてください。
株式会社コムニコでは、自治体のインフルエンサー活用事例をまとめた資料を無料配布しています。そちらもぜひダウンロードいただき、参考にしてもらえればと思います。
また、コムニコでは、これまでにも自治体のSNS運用支援やインフルエンサー活用支援を行っており、確かな実績に基づいたサポートが可能です。「自地域のSNSを活性化したい」「インフルエンサー施策を実施したい」など、SNSに関することであれば何でもご相談いただけます。ぜひ一度お問い合わせください。

SNS運用コンサルタントとして様々な企業のSNSマーケティングを支援してきました。現在はマーケティングプランナーとして「We Love Social」の編集やセミナーの企画を担当しています。









