JALのFacebookページ運用の裏側。あの投稿はこうして生まれた

JALのFacebookページ運用の裏側。あの投稿はこうして生まれた

JALのFacebookページ運用の裏側。あの投稿はこうして生まれた

2015年2月26日、コムニコのミニセッションに日本航空(JAL)のWeb販売部 Web・コールセンター企画グループの桑﨑彩子氏が登壇し、同社のSNSの取り組みについて講演を行った。JALといえば、Facebookページの企業アカウント運用の先駆者であり、その投稿は多くの企業のお手本にもなっている。今回はその運用の裏側について紹介する。

氏は国内外の空港勤務を経て、社内システム開発、機内サービスの企画を担当。その後、同社のホームページ、SNS担当となり現在5年目を迎える。Facebookページ立ち上げ当初からの担当者である。

ブランドの失墜を乗り越えるための施策としてのソーシャルメディア活用

日本航空は2010年に経営破綻したことによりブランド力が大幅に下がり、ブランド調査でも「顔が見えない」などの否定的な意見が寄せられたという。この局面を打開するために新生JALとして取り組んだ施策の一つがFacebookだった。Facebookチームの結成が2011年1月、同年の4月にはFacebookページの運用を開始した。数あるソーシャルメディアの中からFacebookを選んだ理由は、まさに「顔が見えない」といわれていたからこそ、中で働く人の顔を出して仕事と想いを伝える場としてぴったりだと考えたからだ。

Facebookの主な目的は、ブランディング。「JALっていいよね」と思ってもらうためのブランド訴求、ファン化を狙った。そのための運用の肝になったのが、「実名顔出し」と「共感」だ。従来の一方的な販促ではなく共感を生むような情報、また知っていると他の人に自慢できるようなJALの舞台裏を届けることにした。例えば、新しい運賃が登場したら「私もこのチケットで実家に帰りたい」といった社員の生の声を一言入れることで、販促から一歩踏み込んだ共感につなげられるという。

ブランディングの最終的なゴールは、「いざ飛行機に乗る時にJALにしようかなと思い出してもらえること」と桑氏。

社員に実名・顔出しを了承してもらうために伝えたこと

実名・顔出しで仕事の舞台裏を語ることを、JALのFacebookページの特徴としていくためには社員の協力が欠かせない。運用開始当初、社員を説得するためにはまずは「Facebookって何?」から始めなければいけなかったという。また、「実名と顔が知られ、炎上したら怖い」という不安を訴える声も多かった。こうした声に対して桑氏は「JALのスタッフとして、普段から名札をつけてお客様と接することと、Facebookで顔と名前を出すことは同じ」と粘り強く説得を繰り返したという。

専任部署・担当者なし。やる気のある人が集まったFacebookチーム

2011年1月にFacebookチームを立ち上げた時、あえて専属の部署や担当者を決めず、やりたい人が手をあげてチームを作った。現在も、桑氏が所属するWeb販売部とコーポレートブランド推進部、宣伝部、マイレージ事業部、お客さまサポート室などのメンバーが、10名弱のチーム体制で運用している。

投稿は営業日に1-2回を目安としており、原稿作成にあたっては「登場する本人が書く」こととしている。Facebookチームが全部やってしまうと、内容や雰囲気が限定されてしまう恐れがあり、本人の想いをきちんと伝えるため、この運用ルールにした。Facebookチームは、投稿の企画・立案、本人や職場への依頼、作成された原稿の編集、投稿作業を担う編集部的な役割だ。週に1回チームで定例会議を開き、そこで2週間先までの投稿計画を確認し、決定する。

立ち上げ当初はスケジュールを決めてもその通りにまわせず、自転車操業的な運用になってしまい「今から写真を撮りに行く!」と空港まで走ったこともあると桑氏。また投稿を依頼するのにも苦労し、書くことがないと言われれば「担当している業務のことならなんでもいいよ」と懇願したことも。それが運用2年目を過ぎる頃からは、いろいろな職場から「こういう投稿をしたい」といった企画や要望が上がってくることも増えたという。

Facebookページの効果測定指標

予算を獲得してFacebookページを運用している以上、効果測定と評価が必要になる。そこでFacebookページ運用の評価のためのKPIとして、ページのファン数の目標値を設定した。また、Facebookページのエンゲージメント率も評価指標としている。エンゲージメント率については、一律何%と目標値を決めるのではなく、投稿カテゴリーごとの反応の傾向を分析してそれぞれに指標を設定し、それを上回ることを目指しているという。

さらに、Facebookファンになってからの態度変容、意識変容、利用頻度などについてのアンケート調査も行っており、Facebookページでファンになってからの利用率の向上などとの相関関係からも運用効果を実感しているという。その他、ファンになったきっかけとして「友だちがいいね!しているから」「投稿内容がおもしろいから」といった声も、投稿の質の評価としている。

コメント返信の繊細なポリシー

JALのFacebookページには、毎日たくさんのコメントが寄せられる。それらに対する反応についても、「共感」をキーワードに独自のルールを設定して対応している。

まず、コメントに対する「いいね!」。これについては、全部のコメントに機械的に「いいね!」するのではなく、深いコミュニケーション、温かいコメントなどに対して「いいね!」をする。そしてコメントについては、投稿の情報をフォローするような付加的な情報を加えてくれた方、関連する自分の体験談をコメントしてくれた方を中心に返信することにしている。

もう1つ悩ましいのがコメントの削除だ。桑氏は「自由にコメントできる環境で、コメントを削除することは情報統制を行っているようでむしろ信頼性を損なう」と言い、批判的なコメントを受けたとしても基本的には削除はしない方針を持ちながら、チーム内で基準を共有して対応している。

特別な日の投稿

最後に桑﨑氏はJALのFacebookチームの姿勢と想いを表す特徴的な投稿をいくつか紹介してくれた。そのひとつが1985年の日航機墜落事故の日(8月12日)の投稿だ。同社においてこの日は重要な1日として受け止められており、広告などを含めたパブリックな発信は控えられていた。

 

安全推進本部長の権藤です。1985年のJAL123便の事故から今日で29年が経ちました。私たちは何年経とうと、決してこの事故のことを忘れることはありません。8月12日という日、そして御巣鷹の尾根はJALグループの安全の原点です。私は...

Posted by JAPAN AIRLINES (JAL) on 2014年8月11日

では新たなメディアであるFacebookではどうするべきか、とても悩んだという。その時に意識したのがファンを始めとした社会との信頼関係の維持だった。普段毎日あいさつしている人が、自分に都合の悪い時だけ顔を伏せて無視したらどう思うか、感じるか。相手に失礼だし、相手は不信感を感じるだろう。

それは、Facebookでも同じだと考えた。社内での議論を経て、毎年この日にはフライトを支える部門を担当する役員本人が、「安全」に対する自身の想いを述べる投稿を掲載することとしたのだ。Facebookにはそれを見たユーザーやファンがそれぞれの想いを込めたコメントを投稿してくれ、すべてのコメントに目を通すのに4時間近くもかかったという。「とても悩み、そして毎年悩むコミュニケーションであるが、正面から向き合い、取り組んでよかったと感じている」と桑氏は語った。

まとめ:華やかなページ運用の裏側

JALのFacebookページといえば、人気で反応もよく、成功している事例としても取り上げられる事が多い。しかし、その裏側にこうしたきめ細やかで真摯な運用がある。JALのような大企業といえどもFacebookページの運用は一朝一夕にはいかず、地道な努力と工夫を積み重ねているのだ。こうした運用の裏側は大いに参考にすべきではないだろうか。