紛争や自然災害、貧困などで満足な保健医療を受けられない地域に、医師や保健スタッフの派遣を行う国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)。
独立・中立・公平な立場で医療・人道援助活動を行う民間・非営利団体として、1999年にはノーベル平和賞を受賞しました。現在世界各国に29の事務局があり、日本では約70名のスタッフが働いています。
今回は、特定非営利活動法人 国境なき医師団日本 広報部 コミュニケーション・オフィサー 竹内詠味子氏にSNSの運用についてお話をうかがいました。
国境なき医師団の3つの活動
国境なき医師団の活動内容について教えてください。
大きく分けると3つの活動があります。1つ目は、医療・人道援助活動として紛争地域や貧困地域などに医療従事者、非医療スタッフを派遣する活動です。事務局が、登録している応募者とプロジェクトをマッチングして、オファーを出し、受けていただける場合は現地に派遣をするという流れになります。
2つ目が寄付金の調達活動です。活動のための資金のほとんどを寄付金でまかなっているため、キャンペーンやイベントを開催して募金活動をしています。
そして、3つ目が国境なき医師団の特徴でもある広報・証言活動です。活動地の現状や現場での症例、患者の声などを、政府や社会に向けて発信しています。
竹内さんのお仕事の内容は、広報・証言活動になりますか?
はい、国境なき医師団の各国の事務局に広報部があり、活動地の状況や必要な物資など、現地の情報を発信しています。もちろん、それだけではなく寄付金調達や、フィールドスタッフの募集などの情報についても、PRしています。
SNSは発信するためのデジタルプラットフォームとして重視しています。FacebookとTwitterは2012年ごろから本格的に運用を始め、Instagramは2014年から始めています。
現在は、FacebookとTwitterでそれぞれ活動ニュースを1日1投稿、Instagramで活動地の様子を週1回伝えられることを目指して運用しています。
3つの部署で投稿を作成・承認
SNSの運用はどのような形で行われていますか?
コミュニケーション・オフィサーという役割の者は私を含めて3人います。加えて管理業務を行うマネージャー1人が、SNS運用を担当しています。基本的にコミュニケーション・オフィサーの3人が投稿の管理などを担当をしています。
投稿の内容はその3人で作成されているのですか?
活動にあわせて部署が3つありますので、寄付金調達やフィールドスタッフ採用については各部署で投稿を作成、部署内で承認、さらに広報部が最終承認をして投稿をしています。現地での医療援助活動などについては、広報部で作成、承認、投稿をしています。
投稿スケジュールは、あらかじめ広報部で決めておいて、各部署が投稿できるようにしています。スケジュールでは、ファンドレイジングのイベント開催タイミング、採用募集のタイミングなどにあわせてタイムリーに発信できるようにしています。
2018年3月より、コムニコ マーケティングスイートを導入いただいていますが、導入のきっかけは何ですか?
お話したように、各部署の承認、広報部の承認というフローを経て投稿をしていますが、導入する以前はWordで投稿案を作成して、やり取りをしていました。どんどんファイルが増えていきますし、修正で部署や人を行ったり来たりすることも多く、手間になっていました。いろいろな立場のオペレータが一箇所で作業できるようなプラットフォームがあれば便利ということでツールを探したところ、コムニコ マーケティングスイートが要件に合致しましたので、導入しました。
興味・関心を持ってもらうために、文章も画像も一工夫
どういった機能が役に立っていますか?
複数の部署が同じプラットフォームを使えることを目指して導入したので、目的にかなった運用ができています。他の部署のメンバーにも使い勝手を聞いたところ、問題なく運用できているとのことでした。また、予約投稿をしているので、カレンダー機能はわかりやすく、管理しやすいです。他に役に立っているのは、分析機能ですね。各SNSの効果を同じプラットフォームで確認できるので比較もしやすいですし、便利です。
分析ではどういう指標を見ていますか?
Facebookはリーチとエンゲージメント(実数と%)、リンククリック数や動画再生数もみています。Twitterはインプレッション、フォロワー数、エンゲージメント(実数と%)をみています。Instagramは今年に入って本格運用を始めたので、フォロワー数を重視しながら、いいねの数などもみて、次に使うコンテンツの参考にしています。コンテンツを作成するときにも、どうしたら日本のフォロワーやファンが関心を持ってくれるか、シェアしたくなるかを意識しています。活動地は日本では考えられないような状況なので、遠い国の話になってしまいがちですが、どうすれば自分のことのように感じてもらえるか、毎日考えています。
SNS毎に投稿内容を変えていますね。
はい、同じトピックでも切り口を変えています。Facebookページに「いいね!」しているファンには支援者が多いので、より詳しい活動の情報や現地の状況など、コアなことをしっかり書くほうが反応がよい傾向があります。
Twitterは、フォロワーも若い方が多いですし、膨大な情報が流れる中で、ライトなコミュニケーションを目指しています。
画像は、Facebook、Twitterで最適サイズが異なるので、それぞれにあわせた形で作成して投稿しています。動画を使うときは、長さの調整などスマホで見やすい環境を意識して作成しています。
InstagramではMSFの活動地を捉えた印象的な写真を使って、活動地の生活や現地で暮らす人の日常の姿、そこにある現実や人々の持つ希望などを紹介しています。違う世界と思っていたMSFの活動地を、より身近に感じてもらうことが目的です。
SNSでできる小さな支援が大きな力に
他の非営利団体などでもSNSを活用したほうがよいと思いますか?
何がしたいかにもよるとは思いますが、広報のツールとしてSNSは大事なツールだと思います。
SNSを運用することで情報の広がりができたと思います。発信を通して一般の方にも「自分にできることはないか」と思ってもらえます。派遣スタッフとして活動するのはハードルが高くても、寄付をするといったアクションや、SNSで応援するというアクションで、サポーターの一員になってもらえます。FacebookページやTwitterアカウント、Instagramアカウントに「いいね!」をポチッと押すだけのアクションでも、サポートの環を広げられるという点で、SNSは大きな役割を担っていると思います。
今後の運用でチャレンジしたいことを教えてください。
デジタルの世界は変化が激しいので、一般の方の使いやすさ、見やすさを意識した情報発信をしていきたいですね。今は、個別のお返事などダイレクトなコミュニケーションがリソース不足のためできていません。しかし、SNSはファンやフォロワーとのコミュニケーションこそが醍醐味なので、それをどう展開していくかを考えていきたいです。
まとめ:SNSを使って活動の輪を広げる
特定非営利活動法人 国境なき医師団日本 の竹内詠味子さまにお話をうかがいました。
- SNSを通して、医療・人道援助活動、寄付金の調達活動、広報・証言活動の3つの活動を伝えている
- KPIは、Facebookはリーチとエンゲージメント(実数と%)、リンククリック数や動画再生数。Twitterはインプレッション、フォロワー数、エンゲージメント(実数と%)。Instagramはフォロワー数を重視しながら、いいねの数などを重視している。
- 各部署の投稿をコムニコ マーケティングスイートの「承認機能」を用いて、内容のチェックを行っている
- 今後は個別返信なども視野に入れていきたい
最後に、特定非営利活動法人 国境なき医師団日本 様にご利用いただいているコムニコ マーケティングスイートについて、以下のボタンより詳細資料や無料トライアルをお申し込みいただけますので、ぜひご覧ください。