※本記事は2008年より企業のSNS運用を支援してきた株式会社コムニコが監修しています。
企業のSNS運用において、基本的な画像の権利である著作権や肖像権の侵害は「知らなかった」では済まされない重大なリスクとなります。単なる炎上だけでなく、アカウント停止や高額な損害賠償請求に発展する可能性があるからです。
まず、多くの企業担当者が混同しがちな「著作権」「肖像権」「商標権」の違いを明確にし、その上で「SNSで画像を安全に利用するための方法」を解説します。
創作的な表現物(写真、イラスト、文章、動画など)を保護するための権利です。許可なく利用した場合、著作権法違反となります。企業のSNS運用では、他社のロゴやグラフ、無断で利用した素材などが主な対象です。
SNS上では、購入前の透かし入りレンポジ画像のまま使用した画像クリエイティブでマイナスの言及が増え「SNS炎上」状態となる例が目立ちます。「うっかり」というミスであったとしても、企業アカウントによる投稿の場合は信頼を損ねることにつながります。
なお、他人の著作物を写真に撮影する場合も著作権侵害に当たる場合があります。例えば、彫刻などのアート、絵画、キャラクター、本や雑誌の一部などにフォーカスして写真を撮影して公開した場合、著作権侵害となる場合があります。
肖像権は、誰もが自分の顔や姿を無断で公表されない権利(プライバシー権の一部)です。本人の承諾なしに写真を撮影されたり、それを無断で利用された場合に肖像権を主張できます。肖像権は、誰にでも認められるものです。人物の撮影をするときは、被写体となる人に撮影の同意を得ていれば肖像権の侵害にはなりませんので、イベントなどの場合はチケット購入時に写真撮影や利用目的について記載している場合があります。
一方、パブリシティ権は、著名人(芸能人、スポーツ選手など)が持つ、その氏名や肖像が持つ経済的な価値(集客力)を独占する権利です。企業が有名人の画像・写真を無断で宣伝目的に利用した場合、主にこのパブリシティ権を侵害するリスクがあります。
街頭風景や観光地など人が多い場所の撮影では、第三者が写り込んでしまうことがあります。写り込んだ人全てに肖像権は発生しますが、本人を特定できないような写真であれば、肖像権の侵害には当たらないという判断がほとんどです。写り込んでしまった場合は、本人を特定する特徴(顔、体など)をぼかすように加工しましょう。
商標権は、登録されている商標を排他的に利用できる権利です。知的財産権の一部で、商品、サービス、ロゴなどが写り込んでいる場合、権利者の確認が必要になる場合があります。
ただし街頭風景を撮影した時に、看板やネオンサインに企業のロゴが含まれていたり、広告の素材そのものが映り込むような場合は、通常著作権者の利益を不当に害するものではなく、撮影等の対象とする事物等から分離することが困難であることから、「付随対象著作物」として、侵害行為に当たらないとされています。
参考:いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について/文化庁
AIが生成した画像は、一見するとフリー素材のように見えるかもしれません。しかし、その画像が「学習過程で既存の著作物を取り込んでいないか」について、法的な議論が続いています。
企業のSNSでAI生成画像を利用する場合、「著作権侵害の訴えが起こらない」とは断言できないのが実情です。ポイントとなるのは以下の3点。
生成AIの活用ルール・ガイドラインは企業ごとのルールに従うべきです。中には商用利用できないものや学習内容の活用について記載されているものもあるので、どのAIツールを活用するか、どう活用するかは慎重な議論が求められます。
また、「ジブリ風」など既存の著名キャラクターを使った画像クリエイティブは避けましょう。そして、万が一の訴訟リスクに備えるためにも「どのAIツールを活用してどんなプロンプトを使ったか」のログは残しておくとよいでしょう。
企業アカウントの場合、ユーザー投稿(UGC)の活用もあると思います。そのまま活用しても良さそうと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、タグ付けは単なるメンションであり、著作権や肖像権の譲渡や許諾を意味しません。
トラブルを防止するためにも、必ずDMなどで「企業アカウントでの二次利用の許諾」を個別に取るようにしましょう。
なお、インフルエンサーに依頼してPR投稿を行う場合は、画像の権利関係のほか、景品表示法における「ステルスマーケティング」に当たらないか確認する必要があります。ステマ対策のほか、Instagramの場合はブランドコンテンツツールを活用するなど、注意すべき範囲が広がります。以下の記事も確認しておくようにしましょう。
関連記事:ステルスマーケティング(ステマ)規制とは?インフルエンサー案件は要注意!
関連記事:Instagramのタイアップ投稿ってなに?ブランドコンテンツツールの使い方や分析方法
本記事で解説した肖像権・パブリシティ権侵害に関連するトラブルとして、特に最近増えているのがスポーツイベントの撮影や店舗での撮影などに関するトラブルです。
プロ野球(NPB)や全日本大学バスケットボール連盟が観戦時の撮影・配信ルールを明文化し、話題になりました。個人が撮影したスポーツ観戦だけではなく、店舗やイベント会場など、「撮影される側」のルール整備が求められるようになっています。企業担当者にとって、こうした「オフライン・リアル」の場においてのルールやガイドライン作成でリスクを減らす活動も重要になっています。
関連記事:【店舗担当者向け】SNS時代の「撮影ルール」設定ガイド|事例とトラブル予防策を解説
今回は、企業のSNS投稿において注意すべき3つの重要権利である、著作権(著作者人格権含む)、肖像権、商標権について解説しました。SNSでのトラブルを避けるために企業が厳守すべき基本は、次の2点です。
権利侵害は、「知らなかった」では済まされない重大なリスクです。写り込みのぼかし加工や、判断に迷う場合の非公開といった予防策を徹底し、「守り」を固めた上で運用を進めましょう。
近年では、写真素材の無断転載事件や、インフルエンサーPRにおける広告主の連帯責任など、権利侵害のリスクは広がりを見せています。知識を身につけるだけでなく、それを運用体制に反映させることが、企業イメージダウンを防ぐ唯一の道です。
We Love Socialを運営する株式会社コムニコでは、企業のSNS運用でマーケティング活用を促進させるだけではなく、リスク管理に関しても担い、安心安全の運用支援を行っています。安心のおけるインフルエンサーの選定・起用から、炎上・アカウント凍結リスクへの対策まで、専門的な知見に基づいたご相談を承っております。
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