「Meta Festival Japan 2025」は、Metaが2025年5月27日に開催した広告主・企業向けのイベントです。一部のパートナー企業を対象にした招待制の形式で実施されました。
Metaは、InstagramやFacebookを提供しており、広告配信においてはAIの活用を早くから推進してきた企業です。今回のイベントでは、「AIと広告の新時代:Metaの広告ツールを活用した最新成功事例を紹介」と題し、AI時代におけるプロダクト活用やマーケティング成果を高めるヒントが共有されました。
登壇者には、Meta日本法人代表 味澤氏をはじめ、アジア太平洋地域の責任者2名に加え、ボストン コンサルティング グループや資生堂、楽天などの企業が登場。それぞれの視点からAI活用の現在地と、Instagramを通じたマーケティング戦略が語られました。
まず初めに、Meta日本法人Facebook Japan代表取締役 味澤 将宏氏が登壇。「AI時代のマーケティング」と題してAIを活用したマーケティングの潮流とMetaの取り組みを語りました。登壇内容を元に、We Love Social編集部がまとめます。
Metaは世界中の人と人をつなぐ様々なプラットフォームを展開しています。そのファミリーアプリ全体のデイリーアクティブユーザー数は34億人(Q1 2025 Earnings Callより)。ビジネス活用も多く、世界中のブランドと利用者・生活者を結びつける存在です。
さまざまなMetaファミリーアプリのなかで、日本の利用者に最も選ばれているのはInstagramです。2015年に880万だったInstagramの利用者は年々伸長しています。(編集部注:2023年11月時点で6,600万人以上となっており、その後も伸び続けています)
日本のInstagram利用者は、世界と比べても利用率やエンゲージメントが高いのが特徴です。特に、短尺動画を利用する割合が多く、2025年4月に新しい動画作成アプリ「Edits」をローンチしました。
参考記事:【Instagramが開発した新アプリ】「Edits」解説|使い方・商用利用・SNS活用のコツ
Instagramは、安心安全に使ってもらうために10代の利用者向けティーンアカウントを日本でもローンチし、保護者の管理のもとで楽しんでいただくことが可能になっています。
参考:Instagramのティーンアカウントに新たな保護機能を導入
Metaが2023年7月にリリースしたSNS「Threads」にも注目です。2025年4月末に発表されたMeta IR資料でも利用者増が発表されています。
世界と比べて日本は、最もThreads利用者の伸び率が高く、そしてエンゲージメントも高いのが特徴です。Threads上でなんらかのビジネスをフォローしている人は4人中3人にも上ります。
2025年4月には、企業も会話に参加できるよう「Threads広告」が利用できるようになりました。
Metaは2025年、新たなミッションステートメントのもと、AIの可能性を全社的に推進していく姿勢を明確にしました。
これまで「人と人がつながる未来と、それを可能にするテクノロジーを創出します」というミッションを掲げていましたが、これからは「新しい"人と人とのつながり"の未来。私たちは、それを実現するテクノロジーを構築します」と変更し、AI技術を中核に据えた取り組みを加速させていきます。
これまでもMetaはAIへの多額の投資を続けてきました。生成AI利用が増えた現在であれば「AI」への投資は納得かもしれませんが、Metaは10年以上も先駆的リサーチを続け、AIインフラ投資を行ってきた企業です。今後、「全ての人のためのAI」構築のために投資と開発を加速させる予定です。
これによってMetaが実現する未来は「すべての人のためのAI」です。
「最新のテクノロジーを、みなさんのビジネスに少しでも貢献できるよう届けていきたい」
そう語る味澤氏のメッセージには、MetaがAIを通じて「新しい人と人とのつながり」の未来を感じさせるものでした。
Metaは、AIを広告主の成長を加速させる重要な要素と位置づけ、マーケティングの“効果最大化”に向けたプロダクト戦略を進めています。
本セッションでは、アジア太平洋地域のプロダクトマーケティング ディレクター Kishore Parthasarathy氏が、広告運用におけるAIの強みとその成果を語りました。
Parthasarathy氏は、「検索は“人が商品を探す”仕組みであるのに対し、ソーシャルは“商品が人を見つける”仕組みだ」と語ります。これは、ユーザーが何かを探しに行かなくても、ソーシャル上での行動や興味関心に基づいて関連する商品やサービスが自動的に表示されるということ。例えば、Instagram上でテニス動画を見ていると、美しいバックハンドを学ぶことができる、さらに関連商品としてラケットやウェア、コーチングサービスなどの広告が自然に届く──それが、商品が人を見つけるという新しい発見体験です。
その結果、近年では検索に代わってソーシャルメディアが商品やサービスの発見の場として主流になりつつあります。実際に、広告費の観点でも2022年以降はソーシャルが検索を上回る世界的トレンドになっており、新しい商品やブランドを発見するための最大のチャネルになっています。
広告投資額でも2022年に検索広告を上回り、ソーシャルが世界最大となっています。
そして、Metaが世界中の企業やブランドから選ばれる理由は広告効果が高いからです。実際にMeta広告における2024年の1ドルあたりの広告費用対効果(ROAS)は、3.71ドル。(Q1 2024 Earnings Callより)
この高い還元率があるからこそ、広告効果が高いMetaが選ばれるのです。
Metaの広告プロダクト「Advantage+」シリーズは、AIによるリアルタイム最適化と行動予測を活用し、「商品が人を見つける」状態を実現しています。
Metaの広告AIを活用したAdvantage+では、広告と最も関連性の高い人をつなぎ、発見と行動を促します。需要を満たすだけではなく、創出する、といったものです。
数十億件のデータをもとに、広告主の商品を「今、行動を起こす可能性が高いユーザー」に自動で届ける仕組みとして整えています。
需要を満たし、創出する。そして「商品が人を見つける」というのはどういうことでしょうか?
Parthasarathy氏は、「検索は“人が商品を探す”仕組みだが、ソーシャルは“商品が人を見つける”仕組み」と説明。
両者を連携させることで、広告効果を飛躍的に高める相乗効果が生まれると強調しました。
ビジネスを成長させるためにSNSでの検索やAIを活用した広告で需要を創出していきましょう。
このセッションではMetaのAIで広告パフォーマンスを向上させていくこと、そして今後もマーケティング効果を最大化するためのリリースを予定していることを伝えました。
需要を創出するための取り組みとして、Meta Advantage+や、幅広い広告フォーマットの活用を紹介。それを最適化するためのスコアも今後リリース予定です。
そして、AIによるパフォーマンスを最大化するための仕組みとして、目標とその測定方法をサポートするツールを提供予定です。どんなデータを提供し、学習させるのがパフォーマンスを最大化させられるか、という部分です。
先進的なAIと自動化によってブランドがそれぞれの目標を達成し、最も重視する成果に対して最適化できるようにすることを長期的なビジョンとして、近い未来バリューツールを提供します。(順次リリース中)
AIの進化により、広告クリエイティブはこれまで以上に“文化と共創するもの”へと変化しています。
Metaアジア太平洋地域のクリエイティブショップ ディレクター、Angela Bassichetti氏は、マルチモーダルなAI時代における新しいクリエイティブプロセスについて語りました。
毎日、Metaのプラットフォームには34億人がアクセスし、35億のReelsがシェアされています。この状況はまさに「カルチャーの海」が押し寄せる場所といった状態です。
そして今や、文化は文化を生む時代。
たとえば、ある美しい水中ダンスのReelsが、別のクリエイターに折り紙の発想を与えるなど、創造が連鎖的に生まれる環境が整ってきています。そんな中で、カルチャーに根ざしたブランド表現には次の3原則が必要だと語ります。
この「スピード」が、今のマーケティングにおいてはパフォーマンスを最大化する重要な鍵になっています。
従来の「ビッグアイデアを起点にすべてを設計する」発想から、今は「複数の小さな文脈や共感点を束ねて構築するシステム・オブ・アイデア」へと進化しています。
その象徴的な事例が、マクドナルドがZ世代向けに実施した「グランマ・マックフルーリー」キャンペーン。
「おばあちゃんはヒーローだった」というファントゥルースを軸に、懐かしさ(ノスタルジア)とブランド体験を融合。
このキャンペーンでは、多様なおばあちゃんの物語がReelsで共有され、4,200万人にリーチ・4週間で完売という成果を残しました。
Metaでは、以下の3ステップでAIを活用したクリエイティブ支援が行われています。
これにより、1枚の正方形画像から多彩なバリエーションを展開できるようになり、広告の掲載先に応じた最適化が容易になっています。
さらに、こうしたAI支援を通じて生成された多様なクリエイティブは、Metaの広告オークションにかけられ、最も成果が期待できる組み合わせがリアルタイムに選ばれます。これが“仮想ループ”として繰り返され、キャンペーン全体のROI向上に直結しているのです。
「AI活用をしましょう」というと、クリエイターとしては身構えてしまう人も多いかもしれません。このセッションの締めくくりに素晴らしいことばが表示されていましたのでご紹介します。
“Creative will be automated... but creativity never will be.”
自動化できるのは作業だけ。想像力は、これからも人間のもの。
AIはその可能性を加速させる「最強の相棒」となりつつあります。作業を自動化して、人間が想像力を発揮し、相乗効果によってクリエイティブの進化を加速させていく未来が見えてきそうです。
本セッションでは、AI時代におけるマーケティングのパーソナライゼーションを軸にFacebook Japan クライアントパートナー 稲垣智文氏、岩崎譲二氏、 ゲストにボストンコンサルティンググループ合同会社 パートナー 黒川あやか氏 株式会社ビデオリサーチ シニアフェロー 吉田正寛氏が登壇。
変化する生活者の行動や、InstagramがAIと共にどう進化し、「好き」と「欲しい」を繋ぐプラットフォームとしての役割を果たすか、そして広告主が取るべき戦略について活発な議論が交わされました。
AI時代のパーソナライゼーションは、企業にとって大きなビジネスチャンスであると同時に、競争力の源泉となります。「2兆ドル規模」とも。生活者のメディア接触や情報収集のあり方は大きく変化しており、従来の画一的なメッセージではなく、個々に響く「自分ごと化」された共感性の高いコンテンツが求められています。
Facebook Japanでは、Instagramを「好きと欲しいを繋ぐ自分ごと化プラットフォーム」と2022年に再定義し、現在はこれまで以上にAIによるパーソナライゼーションを強力に推進しています。
ただし、広告主にとっては新たな挑戦も必要になってきました。AI学習を進めるためにはデータ活用も重要です。しかし、活用できる状態ではなかったり、チームごとに分断されていることがよくあります。そのため、広告主は、データ・組織の課題を乗り越え、AIを前提としたクリエイティブ開発に取り組む必要があるのです。
本セッションでは、Facebook Japan 営業部長 丸山祐子氏がモデレーターを務め、資生堂のクレ・ド・ポー ボーテ ブランド事業部の千葉裕也氏、エリクシールなどを担当するエイジングケアマーケティング部の小暮亮祐氏が登壇。
高い成長率を誇る資生堂がInstagramへの投資を強化する背景、AIを活用したブランドごとの具体的な成功事例、そしてそれを支える組織的な取り組みについて、具体的な数値や事例を交えながら紹介されました。
資生堂は近年、デジタルおよびInstagramへの広告出稿額を大幅に増加(2023年から2024年にかけて+58%)。その背景には、顧客の購買行動の大きな変化があります。
具体的なブランド事例として、ターゲット層や課題の異なる「クレ・ド・ポー ボーテ」と「エリクシール」の取り組みが紹介されました。
資生堂の事例からは、変化する顧客行動と市場環境に対応するため、全社的な組織改革とデジタルへの強いコミットメントが不可欠であることがわかりました。そして、InstagramとAIを戦略的に活用することで、ラグジュアリーから中価格帯まで、各ブランドの特性に合わせた課題解決と高いビジネス成長を実現できることを証明しています。
AIはあくまでツールであり、明確な目的とゴール設定、そしてそれを使いこなすための組織体制とスピーディーなPDCAサイクルが成功の鍵となることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ダイレクト広告中心だった企業も、市場の成熟と共にブランディングやミドルファネルへの投資を強化しています。
本セッションでは、Facebook Japan クライアントパートナー 豊井みのり氏がモデレーターを務め、NTTソルマーレ(コミックシーモア)の坂元富士太氏と楽天グループ(楽天市場)の尾崎諭氏が登壇。
両社が獲得効果の見えにくいブランド広告やミドルファネル施策に投資する理由、Instagram(Meta広告)を活用するメリット、具体的な配信・効果測定方法、そして今後の展望について語りました。
市場拡大に伴う競争激化の中、短期的な獲得指標だけでなく、中長期的な成長を見据えたブランド構築と顧客育成が不可欠です。
両社は、Instagram(Meta)の特性を活かし、ミドルファネル戦略を推進しています。その鍵となるのが、精緻なデータ分析と効果測定です。
EC・電子書籍といった競争の激しい業界において、これまではダイレクト広告中心に活用されてきました。しかし、これからビジネスを継続的に拡大するためには、ダイレクトな獲得施策だけでなく、ミドルファネルへのアプローチ、すなわちブランドの利用意向を高め、将来の顧客を育成する戦略が重要になってきます。
Instagram(Meta広告)は、幅広い層へのリーチ力と、データクリーンルーム等を通じた精緻な効果測定機能を提供することで、このミドルファネル戦略の強力なパートナーとなり得ます。
ブランド広告は短期的な成果が見えにくい側面もありますが、マーケターは今後の成長を見据え「覚悟とコミットメントを持ってデータに基づいたPDCAを回していく」ことが、将来の大きな成長のために求められてきそうです。
Meta Festival Japan 2025は、AIがマーケティングの各領域を新たな次元へと押し上げる可能性を明確に示しました。本記事で紹介したトップ企業の先進事例やMetaの最新AI戦略から、これからのマーケターがAIとどう向き合い、活用すべきかの実践的なヒントを以下に凝縮します。
AIと人間の感性が融合することで、マーケティングはよりパーソナライズされて、効果的、そして創造的な領域へと進化します。本イベントで示された未来の片鱗を掴み、自社のマーケティング活動を次のステージへと進める一助となれば幸いです。
本イベントで紹介されたAI戦略やInstagram活用の高度化は、専門的な知見や運用体制が求められることも事実です。AI時代において、Meta広告やInstagram・Threads・FacebookといったSNSプラットフォームを最大限に活用し、成果に繋げるためには、内製化だけでは難しい場合もあります。そのような場合は、専門家のサポートも有効な選択肢となります。
We Love Socialを運営する株式会社コムニコでもMeta広告やInstagram・Threads・Facebook運用支援・コンサルティングを行っています。SNS黎明期である2008年に創業し、これまで大手企業を中心に2,600件以上*の運用支援をしてきました。(*2024年10月時点)
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